【report】 BMW 生成 AI で車両開発の不具合管理を効率化 #PRO201 #AWSreInvent

【report】 BMW 生成 AI で車両開発の不具合管理を効率化 #PRO201 #AWSreInvent

Clock Icon2024.12.03

こんにちは。AWS 事業本部の Yoshi です。

re:Invent 2024 でラスベガスに来ています。
BMW の生成 AI で車両開発の不具合管理を効率化プロジェクトについて面白そうな session があったので参加してみました。

セッションの概要

タイトル

PRO201 | BMW speeds car development with a new app for defect ticket routing

説明

The development and production of cars progressively becomes more software driven as the number of sensors and other digital components increases. BMW faces the challenge of routing and resolving tickets during the testing and development phases of designing a new car platform. With over 140 software teams across many areas, BMW now leverages a generative AI large language model (LLM) that provides recommendations on the next best action, augmenting the previously manual process and considering more data for correct team routing. This innovative solution streamlines BMW's software-driven car development process.

スピーカー

  • Kim Robins Senior Generative AI Strategist, Amazon Web Services
  • Oskar Schnaack Applied Scientist, AWS
  • Jens Kohl Chief Cloud Architect, BMW Group

概要

ドイツの自動車メーカー BMW が、車両開発における不具合管理プロセスを革新的に改善するシステムに生成 AI 技術を活用して。グローバルな開発体制における長年の課題解決を目指している。

アジェンダ

    1. BMWのソフトウェア開発の歴史と規模
    1. 開発現場が抱える深刻な課題
    1. AI による解決策
    1. ソリューションのアーキテクチャ
    1. 高度な検索・分類システム
    1. 重複を見つける方法
    1. フィードバックループの確立
    1. 成果と教訓
    1. Data Flywheel の実装

1.BMWのソフトウェア開発の歴史と規模

開発の歴史

40 年以上の社内ソフトウェア開発経験があり特にドライビングシステム、パワートレイン関連、車両制御システムの分野での開発実績がある。

PXL_20241204_163537592

現在の開発規模

開発者数

  • 約12,000人の社内開発者

開発活動

  • 1日あたり 1,400,000 以上のビルド
  • 年間5回のソフトウェアリリース

接続車両

  • 2,300万台の完全接続車両
  • 1日あたり140億件のAWSでのリクエスト処理

アップグレード対応

  • 900万台以上の車両がソフトウェアアップグレード対応
  • 継続的なアップデートとの新機能追加が可能

デジタルサービスの特徴

コネクテッド機能

  • リアルタイム交通情報
  • スピードカメラ情報等

スマート機能

  • ハザード警告
  • 運転支援機能

統合サービス

  • デジタルエコシステムとの統合
  • Amazon Alexa との連携

2.開発現場が抱える深刻な課題

BMW の車両開発では、1万2000人を超える開発者が日々最大140万件のビルドを実施している。この巨大な開発体制の中で、不具合報告の管理が大きな課題となっていたようだ。特に問題となっていたのは、同一の不具合に対する重複チケットの発生や、適切なチームへの振り分けの遅延だ。

項目 数値
年間ソフトウェアリリース 5回
開発者数 約12,000人
日次ビルド数 1,400,000件
接続車両数 2,300万台
日間処理リクエスト 140億件

主な問題

  • 記述や情報の一貫性が無い
  • 適切なチームへの振り分けができていない
  • 履歴や参考情報等の関連情報を活用できていない
  • 同一の不具合に対する重複チケットの発生

PXL_20241204_163949453

余談ですが新しい M5 のリアのデザインがカッコイイ!

3.AI による解決策

これらの課題に対して生成 AI 技術を活用して、不具合チケットの内容を自動分析。複数の言語で報告される不具合情報を統合的に管理し、類似案件の特定や適切なチームへの振り分けを効率化している。

特筆すべきは、システムが過去の不具合対応履歴から学習し、継続的に精度を向上させる点だ。年間5回のソフトウェアリリースを行う同社にとって、この効率化は開発スピードの向上に直結している。

4.ソリューションのアーキテクチャ

アーキテクチャの説明によると。データの取り込みから分析、判断支援まで一貫した処理を実現しているようだ。

PXL_20241204_164625396

クラウドベースの統合管理

  • Amazon S3 バケットを活用したデータの一元管理
  • 個人情報の自動削除機能を実装
  • Claude-3.5 による高度なデータエンリッチメント

システムの主要コンポーネント

要素 機能
データ取り込み S3 バケットによる統合管理
前処理 個人情報削除、データエンリッチメント
検索エンジン ベクトル検索、セマンティック分析
AI 処理 Claude-3.5 による判断支援
フィードバック 継続的な精度向上機能

5.高度な検索・分類システム

重複チケットを検出するために、新しいチケットが作成されるとチケットの概要が作成される。重複の検索には従来のキーワード検索とベクトル検索を組み合わせておこなわれる。また、ベクトル検索のためにテキストの単語や文書を数値化で表しベクトルを埋め込むことでテキストデータの分類や類似性検索に使用されるようだ。

PXL_20241204_165616683

6.重複を見つける方法

単語や文書を数値化することで、類似のチケットは、既存のチケットの類似ベクトルにマッピングされる。

PXL_20241204_165724704

ベクトル検索の実装

  • セマンティック検索による類似チケットの特定
    • ※ セマンティック検索とは、語句の意味を解釈する検索エンジン技術
  • 多言語対応の自然言語処理
  • 時系列データの統合分析

AIによる判断支援

  • 重複チケットの自動検出
  • コンテキスト情報の自動補完
  • 推奨アクションの生成

7.フィードバックループの確立

このシステムの特徴でとても良いなと感じたのは、AI が類似チケットである理由や関連情報を提示してくれた後、人間の判断結果をフィードバックとして取り込み、継続的に精度を向上させる点だ。

PXL_20241204_170205964

8.成果と教訓

システム導入の結果、チケットの正確なルーティング、重複を検出することで開発者の負担を軽減することができたようだ。

PXL_20241204_170321845

また、専門家と連携することで、誤検知を 50%削減している。

PXL_20241204_170450648

9.Data Flywheel の実装

Data Flywheel では、人間の判断と AI システムを組み合わせることで、より効果的な学習サイクルを実現。 Flywheel を AI で加速、イノベーションを起こすのですね。

PXL_20241204_170926154

フライホイール効果

システムの自己強化

  • 使用頻度に応じた精度向上
  • データ品質の継続的な改善
  • ユーザー体験の向上

スケーラビリティの実現

  • チケット処理能力の向上
  • より正確な分類と対応
  • システム全体の効率化

おわりに

BMW の事例は、生成 AI の実用的な活用方法と、その具体的な成果を示す重要なケーススタディとなっている。人間と AI による継続的な学習と改善を通じて、システムの価値は時間とともに向上していくことが実証された。また、自動車産業のデジタル化が加速する中、BMW の取り組みは他メーカーにとっても参考になるケースとして注目されるだろう。

PXL_20241204_171047259

今後ますます AI を活用するためには専門家との連携や使用者本人の知識習得も必要と感じた。もっと AI を活用して皆の生活を豊かにするためにはどのよなことを学べばよいのか考えさせられるセッションであった。

このブログがどなたかの参考になれば幸いです。

以上、Yoshi でした!

Share this article

facebook logohatena logotwitter logo

© Classmethod, Inc. All rights reserved.